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クラシックひとりごとMARKⅡ

アルト・ラプソディ
日付
2011年11月23日(水) 19時25分
アルト・ラプソディ 作品53
作曲 1869年。
歌詞 ゲーテの「冬のハルツの旅」(ドイツ語)
初演  1870年3月3日、イエナにて、パウリーネ・ヴィアルド=ガルシアの独唱、エルンスト・ナウマンの指揮によって行われた。
出版 1870年。
編成 アルト独唱、男声4部合唱、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、弦5部。
演奏
時間 約15分。
 『アルト・ラプソディ』は通称で、本来の曲名は『ゲーテの「冬のハルツの旅」によるラプソディ』と言います。この感動的な作品のテキストは、ゲーテの詩「冬のハルツ紀行(Harzreise im winter )(1777)」の第5~7節からとられ、人間の抱える永遠の悩みを深く静かな響きで歌ったブラームスの最高傑作のひとつです。
 ゲーテは、1777年に「若きウェルテルの悩み」でいたく感動した青年プレッシンクを伴って、ハルツの旅へのぼりました。凄惨な冬の山へ、しかも悩み多い情熱的な青年を同伴してでかけたゲーテの胸には、さまざまな思い出が去来し、人の心を打つこの詩ができあがりました。ここには深い懐疑に陥った孤独な若者への思いやりと、救済の祈願とがこめられているのですが、ブラームスにその詩を選ばせた動機をたどるならば、その苦悩する青年の中に、私達はブラームス自身の面影をも見ることができます。すなわち、伝えられるところによれば、1869年の夏、ブラームスはシューマンの三女ユーリエにひそかな、しかし深い愛着を持つようになりました。ブラームスはこの愛を率直に打ち明けなかったし、クララもユーリエもそれとはつゆ知らなかったので、ユーリエは某伯爵と婚約してしまいました。この事件はブラームスの心を強く痛め、ブラームスは自分の悲しみを音楽で表すことで、心の痛手を癒したのでした。彼は、それを“花嫁の歌”と呼び(クララの日記による)、出版商のジムロックにも、それがシューマンの伯爵夫人への花嫁の歌であること、さらに、恨みを持って、立腹して書いたことを告白しています。
 曲全体は切れ目なしに続き、ゲーテの詩の節に対応する3部からなっています。
 第1部 悲しみや嘆きを思わせるようなオーケストラの序奏に始まり、アルト独唱が沈痛な面持ちで歌い始める。世を捨て荒涼たる冬のハルツを旅する青年の絶望的な孤独が、抑えた調子の中に痛々しく表現される。
 第2部 続いてアルト独唱が、不幸に悩む男の苦しみをいちだんと悲痛な表情をこめて歌う。
 第3部 調性はハ短調からハ長調に転じて、ここで初めて男声合唱が導入される。第2部までとは対照的な、苦しむ人の心を癒す、慰めに満ちた讃美歌風の穏やかな音楽で、祈るように歌われる。

 (大意) 
 ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの
 『冬のハルツ紀行』から


 だが、いま離れ去っていったのは誰だろう?
 草むらの中で小径は絶え
 彼の行くあとには、
 かん木の枝が入り交じり、
 草もまた生い茂り、
 荒野は彼をおし包む。

  
 ああ、慰めも毒と化してしまった、
 愛の酒を浴びるように飲んで、
 人間嫌いになってしまった、
 そんな男の苦しみを誰が癒すのだろうか?
 世にさげすまれ、今は、さげすむ者となり、
 むなしい我欲のために、
 おのれの価値あるものを、
 人知れず使い果たす。


 愛なる父よ、
 あなたの堅琴のなかに、
 彼の耳にとどく調べがあるならば、
 彼の心を振い立たせたまえ!
 彼の曇った目を開いて、
 荒野の中で、
 渇き果てた者の傍らに、
 千の泉が湧いているのを、
 見せてやってください!

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