(晴天。勤務先の商店街内の美容院からアーケード内をしばし歩き、一つ息を吐き出し)
もー、アーケードの中でも暑いわねえ。
夏になったらあたし、溶けちゃうかも…
(オネエ口調なものの、一見すればしっかりした体格の男性。肩ほどに伸びた髪はゴムで一つに束ねており、ダメージしたジーンズに、真っ白な色のTシャツに淡いピンク色のシャツを腕まくりした状態で羽織っている。約束をした、目的地の人気のタピオカドリンク店へ到着すれば、並んでいる女子高生の一人に「ここ、最後尾かしら?」といつもの口調で問い掛けてしまう。振り返る女子高生はこちらを見上げると目を丸くし、慌てて頷いているが、気にせずににっこりと微笑んで「ありがとう」と返した。女子高生たちが正面を向き直し、ゆっくりと再び友人同士の談笑に戻ったことを確認すれば、表に張り出されているタピオカドリンクのメニュー表を眺めながら、時折、スマホに視線を落とし、約束の相手からの連絡を確認し、退屈な待ち時間を消化していた)
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